ママに失恋の慰め方された

ママにここ連日のODがバレて怒られた。

レクイエム・フォー・ドリームのせいでこうなった。あの曲悲壮感あって大好きだったのに、トラウマになっちまった。最悪だ。

まあバレてるのはわかってたけどね。

100錠溜めたはずのエチゾラムが50錠ぽっちしか残っていなくて絶望してしまったよ。

昨夜した話を繰り返して「覚えてる?」なんて言うんだ。ちゃっかり忘れ込んじゃってて、「あああれね」って応答したのが苦し紛れすぎたよ。

 

次ODをしたら母親が家を出て行く。

もしくはわたしが出て行くように宣告された。

冬じゃなかったらわたしが出て行ってもいいな。そのまま夢の一人暮らし。

親の目が気になって、これまで出来なかったOD祭りに首吊り自殺に、何でもできるじゃあないか。

しかしあとで顧みるに、ダブルバインドすぎて頭がおかしくなる。「お前いらない」と言われてるのか「お前を愛してる」と言われてるのか分からない。子どもが混乱するから、保育の世界ではこのような声掛けの仕方はご法度だね。怒った顔して両手を広げて「大好きだからこっちにおいで」って言ってるのと同じだ。いや、笑いながら「殺す」かも。

 

ママの説教を聞いてるうちに涙が出てきた。

近所の教会の説教をYouTubeで聞いてたんだ。これ、本当よ。でもそれを邪魔された。せっかく神さまに向き合う気になったのに。

涙が出たのは叱られたからじゃなくて、脳裏に主治医がチラついて悲しくなったからだ。

わたしにはわたしなりのつらくきつい事情があるのに、そんなことも知らないで怒るなよ、と理不尽さを感じていた部分もあったのかも知れない。

 

迷ったが、わたしはついに主治医が異動する、という知らせを本人から聞いたことを打ち明けた。

それでここ数日気分が沈んでいることや食欲が落ちていることも。

わたしがうつ病になってから母はイヤに共感的になった。たぶんラリった時に大泣きしながら「いつも否定ばかりしてわたしの話を聞いてくれたことなんか一度もない」って言ったのが効いちゃったのかもしれないな。

 

まだ希望はあるよ、と言われた。

主治医の病院へ転院すればいいじゃないか、って。

しかし新幹線代が凄まじいんだ。往復の交通費と比較すると、10割負担の医療費の方が安い。医者に会いたいなら、マジに働かないと。

わたしはてっきり、母はわたしの主治医を敵認定してると思ってたよ。一度病院で三者面談したきり付き添わなくなったからね。まあわたしが嫌がったせいでもある。その後は医者側が呼び出しても、母は来なくなった。子育てを否定された気持ちになるよな、きっと。

だから「そんなことで、しょうもない」って一蹴されると思ってたんだよ。しかし、違った。ママは「メソメソしてていいんだよ」って言った。

 

そして、自分が若い頃はいかに自分もメソメソグジグジした重たい女だったか、ということを語ってくれた。あの人じゃなきゃ無理、そう思ってたけど。歳を重ねていくごとに「はい、次」と諦め、切り替えが早くなったと言った。

「男はね、重たい女は嫌いよ」って言われた。

すかさずわたしは「失恋したわけじゃないんだけど」って言った。

 

ラブレターだとか、犯されたがりのJKにすさまじく嫉妬したりだとか、めまぐるしい感情を抱えているけど。主治医からの離別(の強い可能性)を予告されてから5日ほど経って、やっと。主治医は父でもなく母でもない。恋人でも。わたしが愛着を抱きすぎている祖母でもなくて、たぶん、この悲しみは自分の半身を失った気分に近いんだと言うことに気がついた。

 

医者は、病院に行けば「よく来たね」と言う。腕を切らなければ「えらい」と言う。薬を飲まなければ「がんばったね」と言う。働ければ「すごい」と言う。

わたしの主治医は非常に患者たらしであるから、あんまりなんでもかんでも褒められたって心に響くわけじゃあない。よくわたしの顔の造形について高い評価をくれるけど、世間一般から見てもそのような評価であるならたぶん、わたしは今頃うつ病にもボーダーにもならずに愛してくれる彼氏としあわせな24歳を送っているだろうさ。顔が良くても嘔吐恐怖症は避けられないけどね。

だけど、たぶん。主治医はわたしの中で『自分を肯定してあげられる自分の代理』として機能していたのかもしれない。それが消失してしまうから、こんなにもつらくて悲しいんだということを考えついた。

 

わたしは絶えず泣き続けた。30分か、一時間くらいは涙と鼻水を交互に垂れ流してた。母はわたしのベッドの横に体操座りをして、わたしの目から涙が降りてくるたびにティッシュを抜き取ってそれを拭った。かわいそうに、一時間ずっと拭ってたね。

埒が明かないからどっかいってていいよ、って思ってたけど。言葉も出なかった。なんでも言葉を慎んでしまうことが何よりわたしの課題だな。

いよいよわたしが大人しくなりだして、母はわたしをあやすのをやめた。元々、買い物に行くと言って身支度をしていた途中にわたしの説教を始めたんだ。

何かあるか?と訊かれて。食欲もないのにクッキーを頼んでしまった。

あのコストコのデッケーやつね。

 

 

さ、明日は待ちに待ったいとしの主治医の診察を受ける日だ。

「絶えられません」と宣言して予約を一日前倒しでもらったのに、どうやら生き延びそうである。

さて、アップをはじめるとしよう。

手始めに、左手に貝印の剃刀を持って利き手の手首に充てるんだ。