わたしには頻繁に連絡を取る友達が二人いた。
M美は小中高、F子は中高からの友だちで、社会人になってもつるんだ。
M美はとにかくセックス依存症なのではないかといった具合だった。男をとっかえひっかえ、彼氏は長続きせず、酒を飲むため夜の街に出てその店の店員やらと付き合ってまたダメになる。ってのを繰り返してた。
わたしはその様を見て、夜職の男はクソだと学んだ。
M美がもっと哀れに思うのは、マルチに吸収されちまったことだ。神妙な顔してわたしに打ち明けてきた。大丈夫だ、って言ってはみたものの。クソビッチでマルチはちょっと頭が悪すぎるな、と思ってどこかで蔑んでるわたしがいた。
彼女は一人暮らし資金を早急に調達したいと言い、風俗落ちした。それだけでわたしとしては傑作なのだが。別に彼女は客とするのは好きじゃあないらしい。一応、相手は選り好みしてるんだな、ということが分かった。
F子もいつの間にやら風俗嬢になってた。
まあ、ひとつの物事が続かない人で、仕事もそうだった。彼女はなかなか風俗の方では頑張っていて、たぶんもう普通の職には戻ってこないんだろうな、という感じだ。はて、あと10年20年後に何ができるのかは知らないが。
F子はまだM美ほどのビッチじゃあないと思ってたぜ。
でも今日電話してて分かった。こいつもクソだ。
何故かわたしってF子の彼氏とよく合わされるんだよね。
F子の新しい彼氏が「どうしても第3ちゃんに会いたいって」と、遊びの場に一目だけでも連れてきていいか問われた。
断ったね。先日F子と電話してたら電話器をこいつの彼氏に回されて、歳のせいでもある。幼い体もある。しかしある一言がわたしの癪に障ったんだ。
「F子と仲良くしてやってください」付き合ってまだ数十の男が何様のつもり?
わたしはF子ともう十数年近く友だちやってんだけど???
F子もF子だ。こいつは酒に酔っ払うとわたしと自分のセフレとかを電話させてそれを見てゲラゲラ笑ってる。一体何が面白いのかわからない。わたしはただ不快でしかない。知らない、ちんこぶら下げた男。気色悪いったらありゃしない。
もうこいつの引き連れてくる男と関わるのはよしとこう、とうっすら決心をしたところだったのだ。
そしたらこの、「彼氏と会って」という謎のお願い。
頑固なわたしは断固として拒否した。
F子をよろしく発言で嫌悪感MAXになったから、嫌いな人間リストに登録されてるんだよ。会ってやる義理はないね。そもそも彼女の女友達に会いたい男って何?きしょ。
これを承諾すると男の方がつけ上がって、どんどんこちらの。わたしとF子との時間に侵食してくるのも分かってる。
わたしは基本、友だちの彼氏は嫌いだから。こいつと会って「友だち公認彼氏」にしてやりたくない。
それに、それに、わたしはフリーだ。
前の彼氏にフラれたあたりからおかしくなってうつ病で入院させられてんだ。
もしかしたら、耐えられないかもしれない。
というかそんな二人のラブラブ時間にわたしを呼ばないでくれよ。
ただでさえ、わたしは「わたしはここにいていいのか」がわからない人間なんだ。
ここにいてもいいのか。F子カップルを目の当たりにしたらきっと「ここにいてもいいのか」が頂点に達したわたしは、誰からも見えない透明人間になっちまう。
それから、F子の魂胆はわかってる。彼氏がどうしてもというから応じてやってはもらえないだろうか、自分もすごく嫌だけど断りきれないんだというスタンスで電話してくるが、なんだか分かってきた。
自分の彼氏やセフレとわたしを電話で繋ごうとしたりすることも。
たぶん、言い方が悪いが、マウントをとりたいんだろうな。
わたしは、男の人から認められる価値があるんだぞ、ってことをわたしに見せたいんだと思う。
しかしね、それをわたしは素直に真っ直ぐ受容できるタイプじゃないんだな。認知が歪んでいるからね。どうして、わたしには何もないんだろうって嘆き出すに決まってる。
友だちがわたしを殺そうとしている。
わたしは、きっとこのF子の提案を許したら、死ぬ。